レースカーテンしか引いてこなかったので、中もよく見える。

あれ、なんで見えるんだ?

ベッドに膝立ちして、部屋の中を眺めて気がついた。



「あ、机のライトつけっぱなしで来ちゃった!」

「バーカ」

「もったいない、消してこよ」



ぱっと振り返った私は、いつの間にか足元に座っていた靖人に全然気づかず、体当たりするみたいに盛大につまずいた。



「おい…」



そのまま靖人の身体を乗り越えて、顔から床に突っ込みそうになったのを、なんとか靖人が食い止めてくれて、でも結局ふたりしてベッドから転げ落ちた。

骨とか肉とか、重量とかがカーペットにぶち当たる、音とも言えないような鈍い振動が響く。



「いてー…」

「靖人、重い、すっごい重い」

「大丈夫か、郁実、顔打たなかったか」

「それより、Tシャツのどっか破けた音した…」



なにかに頭をぶつけた気もする。

涙の滲む目を開けると、靖人が床に腕をついて、心配そうな顔で私を見下ろしていた。

あ。



「破けたの、私じゃなくて、靖人のほうだった」

「え、どこ?」



首回りと本体のつなぎ目が裂けてしまっている。

よく見ようと、靖人の服を掴んで引き寄せた。



「この、肩のとこ…」



そのとき、ノックの音がして、ドアが開いた。



「郁、お兄さんに包むお菓子、どれがいいかって、奥さんが…」



遠慮がちに現れた健吾くんの目が、室内をさまよって、床で重なっている私たちに落ちる。

私は思わず靖人の肩から、ぱっと手を離した。


健吾くんが、わずかに目を見開いたのがわかった。