ケータイ小説 野いちご

不透明ヒーロー



そんなこと昔からわかっていた。千尋には可愛い子たちばかりが寄ってくるし、それを間近で見ていたから自分が劣っていることくらいわかっている。


『本当なんであんたなんだろうっていっつも思ってたよ』

『なんにも魅力ないじゃん。幼馴染って立場だけで大事に守られて、それに甘えて……ズルいよね。白崎さんってさ』


あの時は、面と向かって言われた衝撃で深くは考えられなかったけれど、今では意味がちゃんとわかる。私は幼馴染じゃなければ、千尋の隣になんていられなかった。

立ち尽くしている私を不思議に思ったのか千尋が歩み寄ってきた。


「文香、どうかしたの?」

「……ううん」

千尋の手にCDが見えて、それを見つめていることに気づいたのか千尋が私の目の前までCDジャケットを掲げた。


「三浦さんに借りたんだ」

「そう、なんだ」

「前に貸してくれるって約束しててさ。女装バレても三浦さんは前と変わらない感じで話してくれて助かった。ああいう人もいるんだね」


また胸の奥がざわつき、嫌な予感がする。

千尋が女の子に対して好印象を持っているのは、今までほとんどなかった。

女の子を苦手とする千尋にも、きっと心を許せる子が現れる日が来る。いつか千尋にも彼女ができるのかもしれないと頭のどこかでは思っていた。


その始まりが今なのかもしれない。


自分は恋に落ちているくせに、千尋には恋に落ちて欲しくないと思っているなんて……私は身勝手だ。






< 36/ 164 >