「アンタ、毎晩毎晩遅くまで電話なんかするから起きれないんでしょう?!」

「だってそれは友達が悩んでるって言うからさぁ……」

「いいわけは聞きません!とにかく、また遅刻するようなら携帯電話は没収するから!」



……そんなこと言ったって、泣いてる友達を放っておけないんだから仕方がないじゃん。

奏にしか相談出来ない、なんて泣きつかれたら眠たくても目を瞑れないじゃない。



鬼の形相で仁王立ちをする母を目前に、喉まで出かかった言葉を飲み込み洗面台へ走った。



「急がなきゃ……急がなきゃ……」



とりあえず朝ごはんはスルーだ。

手早く栗色のショートボブを梳かし、雑に顔を洗って歯磨きを済ませる。



「奏!朝ごはんは?!」

「ごめん!間にあわないからもう行くね!」

「ちょっと奏!!」



目まぐるしいスピードで着替えを終わらせ、立ち上がった襟を直しもせず、スクールバッグを引っ掴み家を飛び出した。