episode

食後に皆が食べたお皿を洗っていると、原田さんと永倉さんが手伝いに来てくれた。

わあ原田さん!永倉さん!ありがとうございます!

いいっていいって〜もともと俺たちも当番だしね

ああ!それに可愛い桜のためだしな

もう!やめてください

ははは!ごめんごめん!
まぁ俺たちが飯作るとなぜか厠が混雑し出するからね

ああ、まったく失礼な奴らだよな

お気の毒です…

だからさ、皿洗いくらい俺たちに任せてゆっくりしてきな?

そうだぞ。桜。お前はもっと人に頼ることを覚えた方がいい。

2人の気遣いが素直に嬉しくて、あとはお任せすることにした。

回廊に出ると、いつから降り始めたのか外は雨だった。

うわー雨って最悪。
髪広がっちゃう…

急いで部屋に戻ろうと走る。
すると部屋の前の縁側に平助が座っていた。

平助じゃん。私になんか用?

おー桜… いや別に用とか無いんだけどさ、暇で、、

ああ…確かにこの雨じゃ外にも行けないしね

うん。

私も平助の隣に腰掛ける。

あーあー。今日は折角の非番だったのになぁ

だよなぁ。今日は桜と街に遊びに行く約束してたのになぁ

身に覚えがないんだけど、残念だなぁ

はぁ…

二人でため息をつく。

どうする?稽古でもする?

えーなんとなく今日は動く気になれない

へぇ。珍しいじゃん

ほら、今日雨だし。

どんな理屈よ
…総司はどうしてんだろ

あー沖田さんはご飯食べ終わるなり部屋で寝てるよ

えっあの刀馬鹿が?稽古もせずに?

おいそれ聞かれたら殺られるぞ

あっやばっ

なんかー沖田さんは雨の日になると頭が痛くなるんだって

ふーん偏頭痛持ちなのか
なら、一緒にお見舞い行かない?

えーやだよ。一回行ったことあるんだけどそん時斬られそうになったもん

うわっなにそれ凶暴田総司じゃん

そうだよ。鬼田総司なんだよ

うーんでも頭痛田総司、大丈夫かなあ

大丈夫田総司だと思うけど、心配だよな

………………

あっ!そうだっ!!

うおっ!びっくりしたいきなり立つなよ

ごめんごめん
ところでさ平助、小麦粉ってある?

小麦粉?あー、あった気もしなくはない。

じゃあさ、卵は?

それならあるよ

砂糖は…あったりする?

うーんどうだったかなぁ行ってみないとわかんない

なるほど…よし!平助!
クッキー作るぞ!

は?くっきい?

うん!

なにそれ

うーん、簡単に言うと未来の甘味?

へぇ…おもしろそう!俺、甘味って作ったことないや!

そうなの?簡単に作れるから平助もやってみようよ

うん!やるやる!

よっしゃきまり!
たくさん作ってみんなに分けてあげよう!

そうしよう!

というわけで、私と平助のお菓子作りがはじまった。

台所へ行くと、原田さんと永倉さんはすでに皿洗いを終わらせていていなかった。
砂糖があるか確認すると、奇跡的にあった。

これで簡単なクッキーなら作れる。
さすがにバターはなかったので、油で代用することにした

割烹着と三角巾をつけて手を洗う。

桜ぁ…

なあに平助

俺もこの割烹着着なきゃダメ?

何言ってんの!当たり前でしょ!
男しかいない屯所で何恥ずかしがってるのさ

桜は女じゃん!

ああそうだったね…私は気にしないでいいよ! 平助の割烹着姿をみて笑ったりしないから!むしろ超絶可愛くて鼻血でそう

元々の可愛さに加え、もじもじと恥じらう姿は多分男が見ても可愛いだろう

もー!それがやなんだよー泣

ははっごめんごめん。でも前一さんも割烹着きてご飯作ってたよ?

それほんと?!斎藤さんも着たんならいいや!

単純かい!
…まあいいや、作るか

はーい!

じゃあ平助は小麦粉出してざるで越してくれる?

私は砂糖やるから。

御意!

それからは、小麦粉と砂糖を混ぜたのに卵と油を加え、2人分に分けて手でこねる。

平助はこねる作業が気に入ったらしく私の分までこねた。

その間に私は鉄板を洗い、かまどに火をたいておく。

桜!これでどう?!

ん!いい感じ!うまいじゃん
やっぱ男は力あるなぁ。

得意げにへへっと笑う平助。

クスッ… 妹がいたらこんな感じなんだろうか

次に鉄板に生地を並べる。

うーーん、どうせなら可愛い形にしたいよねぇ

平助、これからこの生地を好きな大きさにちぎって好きな形にしてくれる?

好きな形?

うん。例えば猫とかーお花とか、刀とか!

難しそうだな…

あっ難しかったら普通に丸めてそれを薄く潰すだけでもいいよ!

いや、なんかの形につくる!

わかった。じゃあ任せたよ

うん

私は星やらハートやらを量産した。
型がないとこんなに難しいのか…

平助ちゃんと作れてんのかな…

チラッと目をやるとなにやらオブジェのようなものを作っている、

ちょっ!平助!立体はだめ!


え?

そんなこんなで後は焼くだけだ。

多分普段は釜を置く穴に代わりに鉄板をおけばいいだろう。

ねえねえこれだけでくっきいってやつができんの?

うん。でもこうやって焼くのは初めてだから上手くいくかわかんないなあ

桜だし大丈夫だ!

意味わからん…

普通に渡すんじゃつまんないからさ、どうせなら可愛く飾って渡そうよ

どうやって?

和紙で包んで、一言程度のお手紙でも添えとく?

おお!それいいね!
じゃあ俺和紙持ってくるよ!!

よろしく!






平助が和紙を持ってきてくれたので、私は自分の筆箱を持ってきた。
そこからピンクや青のペンを出す。

さ、桜っこの筆色がついてるっ…

そうだよー?これなら可愛くなるしね


メッセージを書く和紙をハサミで小さく切り、平助に何枚か渡す。

可愛く包むのは幹部だけでいいよね?

うん、他の奴らには俺が渡しとくよ。

うん。じゃあ平助は誰に書く?

うーんと沖田さん!

えっ私も総司に書こうと思ったのに!

ダメでーす俺が沖田さんに書くんです〜

ちぇっ だったら私は土方さんと近藤さんと斎藤さんに書くから!

はぁあ?ずるいだろお前!いいもんねーそしたら俺は原田さんと永倉さんに書くから!!

むきー!じゃあ私は山南さんにも書きます!

なら俺は山崎さんに書く!

……いい感じに別れたね…

そうだな。争うほどじゃなかったな

ふふふっじゃあ平助、好きな色の筆で書きなよ。

これどうやって使うんだ?

ああ、まず蓋をとって、そのまま書くだけ。

こんな風に、といって手本を見せる。

すげえなぁ

2人でメッセージを書く。

時折クッキーの様子を見ると、なんとか焼けてはいるようだ。 ひっくり返してまた焼く。

と、ここで一つの疑問が浮かんだ。
そういえば、前土方さんの書類見たときずいぶんと達筆で読めなかったな…でもあれがこの時代で普通だとしたら、逆に私の書いた字読めないんじゃ…