まだいたいのに死にそうになって帰ってしまっては勿体無い。

不思議なことに一度過ごした時間には二度と行けないようになっている。

例えば一度Bという時代にいたことがあったとして、次にその前のAという時代に飛ばされて過ごしていくと、Bの時代になった瞬間現代に戻る。

それなら今を楽しまねばな。

男は一撃で気絶したようだ。

若干地面にめり込んでいる。

「あ、あのっ」

ちょっと可哀想かななんて男のそばにしゃがんで観察してると、上から女の子の声がした。

顔を上げると、あの絡まれてた子だった。

「あれまだいたの?私としては早く安全なとこに逃げて欲しかったんだけど…怖くなかった?何もされてない?怪我は?」

しゃがんだまま言うと、女の子も同じ目線でしゃがんだ。

「助けてくれて本当にありがとうございます!あのっお礼がしたいのですが…」

可愛く首を傾げて、甘いものはお好きですか?と聞いてきた。

私は甘いものは大好きだ。

「お礼を言われるほどじゃないけど…甘いものは食べたいなっ!」

ニコッと笑って答えると、女の子は嬉しそうに、

「じゃあっ私、あそこの甘味屋で働いてるんですけど、そこで何か食べてってくださいっ」

と、ここから少し離れたお店を指差していった。

「いいの?やったっ!じゃあ早く行こうっ!」

私は立ち上がり、女の子の手を取って走り出す。

女の子はきゃあっと言ってこけそうになった。。

あっ!!この子着物だった!

「ご、ごめん!着物じゃ走りにくかったね」

「あははっもー!元気よすぎですよ」

笑い飛ばしてくれた。

うわぁええ人や…

そして甘味屋につくと、そこで待ってて。と言ってお店の奥に入って行ってしまった。

私は席について店内を見渡す。

シンプルだけど綺麗にしてるなぁ。

割と大きいお店だ。

キョロキョロしてると女の子が奥から美味しそうなわらび餅や、餡蜜を持ってやってきた。

「お待たせしましたっ」

「きゃー!美味しそう!!本当にこれ食べちゃっていいの?!」

「もちろんっ!命の恩人ですもの」