青井さんとそう言って笑い合う。

健吾くんが、私と彼らの板挟みでなにも言えず、困っているのがわかった。


私はきっと、これから幾度となく直面する、こういう場面に慣れないといけないんだろうと思った。

制服を着ていようがいまいが、私は見るからに子供で、大人からしたら遊びで手を出すような、そんな世代の相手なのだ。

知ってたし。



「そうだ、いく、ワンちゃんの件、ありがとね。親がもう楽しみにしてて、名前まで考えてるの、まだ会ってもいないのに」



え…。



「いや、こっちこそ。信頼できる人に渡せて、安心してる」

「任せてよ、前の子だって、うちの両親に愛されて、17年も生きたんだよ」



会話するふたりを、すごく遠くから眺めている気がする。

"同僚"って、この人のことだったのか。

…女の人だったのか。

話題が私のことから逸れて、健吾くんはほっとしたんだろう、ようやく笑顔を見せて、楽しそうに話すようになった。



「17年てすげえな」

「いくもたまに会いに来たら? 合わせて私も実家に帰るから」

「実家ってどのへんなんだ?」

「バイパスのほうよ、庁舎のある」

「あ、じゃあお前んちとも近いんだな」



なにひとりで胸とか痛めてるの、私。

家の場所くらい知ってたって、いいじゃない。

そういうの、心狭いよ。

鬱陶しいよ。



「ダメだなああいうの、一度触れ合っちゃうと、かわいくて」



健吾くんが煙草を吸いながら、照れくさそうに笑った。

青井さんも自分の煙草を取り出して、親しげに、全部知ってるよ、って感じの優しい目で健吾くんを見る。



「あんたはけっこう、情が移りやすいのよね」



私のことを言われている気がした。