お母さんがぷっと吹き出したのと同時、わたしもなんだかおかしくなって、同じように吹き出して笑った。
それからわたしは、「お風呂に入っておいで」と言い残して部屋を出ていったお母さんを見送ると、勉強机の上に写真を立てかけてお風呂へ向かった。
髪や体に染みついた焼き肉の香ばしい匂いを洗い落として布団に潜ると、お肉の重厚な満腹感も相まって、すぐにまぶたが持ち上がらなくなる。
この日は不思議と、涙は出なかった。
もしあの写真を撮らなかったら、百井くんとは違う出会い方をしていたのかな……。
そう思わないわけじゃないし、実結先輩とわたしの立場が逆だったらよかったのにと思わないわけでもない。
でも、どうしてだろう。
心のどこかに、今のこの状況に満足感を覚えている自分もいて。
「百井くんがいい方向に変われたんだから、それでいっか」
そう口に出したとたん、わたしは安心したように眠ってしまっていた。