でも、青磁だけはだめだ。

生理的に、本能的に、嫌いだ。


あの硝子玉みたいな瞳を見ると、反射的に視線を逸らしたくなってしまう。

彼に見られているだけで、私は息苦しくて、居たたまれなくて、すぐにも逃げ出したくなってしまう。


ああ、だめだ、と私は深く呼吸をした。

青磁のことを考えていると、どんどん心が荒んで、ぼろぼろに毛羽立って、しまいには暗く沈み込んでしまう。


あんなやつのことなんて、考えないことにしよう。

そう思った。


でも、そう思ってから、これで何度目かな、とふと疑問が浮かんで、自分で笑えてきた。


この数ヵ月、彼と同じクラスになってから、私は何度も何度も、同じことを思ったのだ。

数えきれないほどたくさん、『もう青磁のことを考えるのはやめよう、嫌な気分になるだけだ』と考えて、それでも彼の言葉を忘れることはできなかったのだ。


忘れられないなら、耐えるしかない。

彼と同じクラスになってしまったのは変えられない運命だし、しかも隣の席になってしまったのなんて不幸としか言いようがないけれど、自分ではどうしようもないことなんだから、我慢するしかない。


私は自分にそう言い聞かせて、読めないままに本を閉じて枕に突っ伏した。