「……そうやって、八重のことばっか考えておかしくなりそうだ」



七瀬先輩は困ったみたいに笑う。


いつだって、意図も簡単にわたしの胸を焦がしていくんだ。



「だから」



言いかけて、わたしの頭の後ろに手をまわした。


髪がくしゃっと小さな音をたてれば、視界を埋めるほどに美しい悪魔が迫ってくる。



「それだけお前に夢中だって気づけよ?」



ーーー甘い言葉が鼓膜をくすぐる。



もう、それだけで充分だって思ってしまった。