「なぁ、わかってんだろ?」


「わ、わかりません……」



吐き出された溜め息に胸が痛みを覚える。


困らせてしまったのか呆れ果てたのか、恐る恐る見上げれば七瀬先輩と目が合って。



「八重は結構バカだな?」



淡く微笑んでわたしの唇を親指でなぞる。


バカだなんて、と悪態つく暇も与えてくれない悪魔に、あっという間に唇を塞がれた。


わたしは目を閉じることすら忘れてしまって、無防備に伏せる長い睫毛を見つめているだけで頭の中がぼやけてくる。