ケータイ小説 野いちご

理想の恋は、誰に微笑む




とは言え。

春名がそんな紳士的な振る舞いをしてくれるはずはなかった。

割愛していたけど、春名の言動は軽い。

女の子には漏れなく甘い笑顔と甘いセリフを振りまき、こいつを取り巻く声も甘い。

それは、未亡人(父親が死んでいるかは知らないけれど)相手でも同じ。

あたしには確実に向けない笑顔をお母さんに咲かせ、二人仲良く肩を並べている。

まぁ、お母さんのリハビリになっていいんだけどね。

そんなことを思っていると、


「おい」


背後から声を掛けられた。


「なによ」


振り返ると、そこにお母さんの姿がない。


「あれ? お母さんは?」

「トイレ」

「ああ」

「……つか」


いつもなら高圧的な物言いが、今日はどこか歯切れが悪い。


「なによ」

「ますみさんから聞いた」

「ますみさん?」


いつの間に、下の名前で呼び合う仲になっていたのか。

怪訝に眉を寄せるも、目を伏せた春名は気づいてはおらず、そっとその薄い唇を開いた。


「お前の生活のことだけど……」

「そのことだけど」


春名の言葉を遮り、あたしは再びトンカチを打ち付けた。


「久堀さんにはもう知られてるから」

「は?」

「……あんたの言う、男漁り、のこと」

「……は?」




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