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「...っ......」
目を開ける。ここは...どこだ...?
どこかの部屋のベッドの上で”俺”は目が覚めた
さっきまで...何を...
「っ!」
そうだ、フードの男に!
急いで周りを見るが誰の気配もしない
大丈夫...なのか...?
どうやってあそこから帰ってきた?
あれは夢なのか?
ここはどこだ?
なんで”俺”はこんなところで寝ていた?
...分からない、何も思い出せない
自分自身のことなのに分からない
「なんでなんだよ...っ...」
怖い、
自分のことは自分が一番分かるはずなのに、
それが分からないことがとてつもなく怖い
”俺”の存在など最初から無く、
このまま消えてなくなってしまうんじゃないか
と思えて仕方がない
身体が震える
その震えを止めるように腕に力を入れるが
震えは止まらない
嫌だ...
「消えたくない...っ...」

「ジャン?」
「っ!」
バッと振り向くとそこにはマルコがいた
「マル...コ...?」
マルコはいつも通り優しい笑みを
”俺”に向けている
「ジャン、起きたんだね、おはよう」
「お、おぅ...」
やっぱりマルコの顔を見ると安心する
”俺”がここにいると、
”俺”の存在がここにいても良い
と言ってくれているような感じがする
ちょっと大袈裟かもな

安心すると今まで1人で抱えていた疑問が
一気に湧き出た
「そういや、ここはどこだ?
なんで”俺”はここにいるんだ?
”俺”はあそこからどうやって戻ってきた?
あのフードの男はどこいったんだ?
ってかあれは誰なんだ?
マルコは大丈夫なのか?
”俺”は...”俺”なのか...?」
口を開くとどんどん疑問がわいてくる
自分でも驚くほど言葉が止まらない
独りで抱えていた不安を
誰でもいいから共有したくて
目の前のマルコに疑問を投げかける
しかし何を聞いても笑顔を絶やさないマルコに
違和感と恐怖を覚えた
「ジャン、どうしたんだい?
まだ寝ぼけているのかな
もう少し眠っていた方がいいよ」
笑顔のまま”俺”に近付いてくる、怖い
「マ…マルコ…?」
マルコの笑顔に恐怖を覚えた”俺”は
それから逃れる為後ずさる
尚近寄ってくるマルコから
逃げる為視線を向けたまま
ベッドから下りる
「来るなっ…!やめ…っ…」
後ろにあった壁にぶつかりもう逃げられない
マルコが目の前にまで来て
そのまま”俺”を押し倒す
笑顔は崩れない
怖い
マルコの手が首にかかる
力が入れられる
息ができない
怖い
「ひっ…」
酸素を求め息を吸う
さらに力がこめられる
なんで?
どうして?
何か怒らせるようなことしたか?
”俺”バカだから言ってくれなきゃ
わかんねェよ…
なぁ
「っ…マル…コ…っ…?」
苦しさと不安とやるせなさから涙が出る
視界がゆがむ
ごめん
何かしたなら謝るから
何もわからないまま終わりなんていやだ
頼むから教えてくれよ
もう一度目の前にいる友人に
問いかけるように
届いてくれることを願って
口を開く
「…っ…」
声にならない声はマルコに届くはずもなく
ただただ変わらない笑顔を向ける
このまま…
薄れゆく意識の中
マルコの口が開く
「オマエノセイダ」
そう言ったマルコの目は
あの男と同じように
吸い込まれそうな暗闇が広がっていた
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