「…先…」


「生田 スイ。俺の女になれ」



まっ…


またそれかぁぁぁぁーー!?



「だから!冗談も大概にして下さいって…!」



先生を振り切ろうと身をよじるも、全くビクともしない。


それどころか、先生は私に回した腕に更に力を込める。


「先生っ!いい加減に…」



「壊してやる」



「え?」



私が抵抗を止めると、先生は腕の力を弱めて私の体を自分の方へと向けた。


それから、驚くほど真っ直ぐ私を見詰めてくる。



その時、私は初めてちゃんと先生の目を見た気がした。


真っ黒ではなくて少し茶色がかったその瞳は、小さな子供のようにとても澄んでいて、


まるで吸い込まれるように、その瞳に捕らわれる。




「お前のその空っぽでつまらない世界、

俺がぶっ壊してやるよ」





私の世界に…––––



「だから、俺と付き合え。翠」



修復の利かない、ヒビが入った瞬間だった。