『バーカ』



こっちを向いた彼と目があって、笑いながら口パクでそう言った。


ちょっと口を尖らせながら恥ずかしそうにする彼。


うん。かっこかわいい。


坊主頭をしてしっかりと鍛え上げられた体は今の彼の表情には似合わない。



「じゃあ加賀、前に出て解いて」



とつぜん先生に指名された彼はすこし焦り顔。


練習問題、解いてあるわけないもん。授業始まってからずっと寝ていたんだから。


でもね、どうせ解いちゃうんだ。


さっと例題の解説に目を通して、瞬時に理解して、いつも通り黒板にチョークを走らせる。きっとそうだ。


数秒後、ガタッと音を立てながら立ち上がった彼は黒板の前に立ち、ためらわずに回答を書き始めた。