知らない間に日がのびて、カルム城を暑い日差しが照らす。


城内はわりと涼しいものの、一歩外へ出ると、まさに地獄。


容赦なく太陽が照りつけ、体力を奪っていく。



この季節は、武官たちにとって最大の敵であった。


「ぅあっちいいぃ!!」


広場へ出た瞬間、デュモルは誰にともなく叫んだ。


常に側に控えているユナが、はいはい、と適当に返事をする。


「暑いのはみんな一緒なんです。隊長だけじゃありません」


「わーかってるって!しっかし武官いじめだぜ、この暑さは」


ふぅ、と手で自らを仰ぎながら、デュモルは空を眺める。


「雲一つない青い空。さえずる小鳥たち…」


「何、詩人ぶってんですか」


「うるっさい。いいんだ、景色を眺めんのは好きだからな。ただ、この時期だけは文官を恨むぜ、俺は」


チッと舌打ちをするデュモルに、すかさずユナがつっこむ。


「何言ってんですか。隊長は雨が降っても雪が降っても嵐になってもその台詞言うでしょう」


つまり、悪天候の時はいつも文官を恨んでる、ということになる。


「…まぁな。恨んでも、羨ましいと思ったことは一度もないがな」