「おい、あのお相撲さん。まだお前のことを見てるぞ。惚れられたんじゃないのか?」


お相撲さんが、まだ、私のことを、見てる……!?

やだ! やだよ、カオル!

あたしはカオルのことが好き!

お相撲さんなんかより、カオルのことが好きなの!

冗談でも、そんなこといわないで!

あたしは、抑えられない気持ちがバクハツして、思わずどなっていた。


「やめてよ、カオル! あたしは、お相撲さんなんて、大嫌いなの!」


あたしのどなり声に、カオルはびっくりしたみたいだった。

それに、お相撲さんにも聞こえていたみたいで、お相撲さんは泣きそうな顔をしながら、走って行った。


バチン!


カオルがあたしの頬を叩いた。

お父さんにだって殴られたことないのに。

カオルは、あたしの目を見て言った。


「リョーコ、お前、ゴータマ・シッダールタって知ってるか?」