腕を掴む力がふと弱くなったかと思ったら、

「…!? 恭、やめっ…」

ドサ…っ


「…なぁ」

「…っ」


背中にはひんやりとした床。

…目の前には、恭の顔。


私に覆いかぶさるように床に押し倒した恭。


ー キーンコーンカーンコーン…


そこに、お昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。

…ここは、空き教室。


授業が始まれば誰もここは通らないし、来ないだろう。


ーー パチンッ、

「きゃぁああっ!!」


恭が私の襟元を掴んだと同時に弾け飛ぶボタン。


「……やめっ、」

「……」


恭は私の声も無視して私の服のボタンに手を掛ける。


「やめ…て……っ」


涙で視界がボヤけるも必死に抵抗する。

ー…でも所詮男と女。

力の差は計り知れない。


ー とうとう、全てのボタンが外された時、私は抵抗もせずされるがまま。

恭の口角が上がった。


その時。



「お前、ふざけんなよっ!!!!」

空き教室のドアが物凄い音をたてたと同時に怒鳴りながら入ってきた人。


…ああ、来てくれた。


「…か、ずく…っ」


「ハア?ふざけてんのはそっちだろ。

彼女とのお楽しみ中に邪魔してんじゃねえよ餓鬼」

…それに、

そう呟いてから恭は私を見て

「お前、いつから和くんなんて呼んでるわけ?」

「……!」


ギロリ、と睨まれて身体がビクついた。

ー その眼が、とても冷たかったから。