その声に驚いて、私と榎並さんは振り返る。

…と、そこには、出社したばかりなのか、まだ手に鞄を持った三枝課長。

「…まだ人が少ないからいいけど、怒鳴り声が廊下中に響いてたよ」

三枝課長の言葉に、榎並さんは真っ赤な顔になり、目を泳がせた。

「…大体、あの仕事はさ、俺、榎並さんに頼んでたよな?それなのに、何で清水さんがやってるのかな?」

「…そ、それは」

「…うん、清水さんは、榎並さんが急用が出来たから、代わりにやったって言ってたよ」

「そ、そう、そうなんです。どうしても外せない急用が出来て…」

安堵したようにそう言った榎並さん。

そんな榎並さんに笑顔を向けた三枝課長だったが。

「…俺さ、どんな理由があるにせよ、自分の仕事を他人に押し付ける人って信用できないんだよな」

三枝課長の言葉に、榎並さんはバツの悪そうな顔つきになった。

「仕事が出来ないなら、庶務課にでも、移動願いだそうか?」


…庶務課は、この会社の墓場と言われる仕事の出来ない人が集まる課とい有名だ。