「えっと…気を取り直して本題にもどります。」

着物姿のキツネがボソリと言った。

犬神は、神主の様な格好を直しながら真顔に直った。

タヌキは相も変わらず下半身を堂々と出したまま、赤いチャンチャンコから短い腕を組んでいる。


「今日集まってもらったのは、最近の人間が妖怪を恐れないのは何故か?妖怪の存続の危機をどう回避するのか?ということです。」

キツネは説明を続ける。

「昨今、妖怪の数は減り続け、古なら我々などこんな話に参加もさせてもらえないレベルの話なのですが、上からの命令により今回話し合った結果は報告させていただきます。」

タヌキが言う。

「俺は、化けタヌキを100年やっているが、最近の人間は、妖怪の類いを信じちゃいないな。」

犬神が続けて言う。

「確かに、あとは街に人が集まり、夜の街は恐いぐらいに明るくなってしまった。そのせいでなかなか出るに出られなくなった妖怪はたくさんいる。」

キツネも言う。

「妖怪も信仰というか、信じる気持ちによって存在できるモノがたくさんいるのも事実。現実に金毛白面様もかなり弱られている。」

タヌキが言う。

「玉藻の前ってまだ生きてたん?」

犬神も首を縦にグイングイン振っている。

キツネがイライラしながら言う。

「その名前を言うな。金毛白面様が嫌っている名前だ!それにいつ死んだことになってるんや‼」

タヌキが言う。

「カラスから聞いたけどな?」

キツネは、さらにイライラしながら聞く。

「どこのカラスや‼」

タヌキは、少し考えると答える。

「わかんねぇな…それよりも話を続けへんか?」

犬神が勝手に話を続ける。

「京都の鞍馬に住んでる妖怪もかなり減ったみたいやが?」

タヌキは考えながら言う。

「そもそも、妖怪を信じなくなった理由ってなんやの?」

キツネは、完全にイライラを消せきれずに言う。

「幽霊とか、ユーホーってのは信じてるみたいですけどね。」

犬神が聞く。

「ユーホー?」

タヌキが言う。

「ユーホーも知らんの?」

犬神が言う。

「ユーホーって何?」

タヌキがキツネと犬神を交互に見ながら話し出す。

「俺も別に詳しくないけど、カッパに似た生き物の乗り物やで。蒸気機関車みたいに地面を移動するんじゃなくて、空を飛んで移動できる丸こい乗り物みたいやわ。」

キツネが取り付けたように話す。

「そのカッパの乗り物が今は人間が信仰してるモノみたいですね。」

犬神がさらに聞く。

「金魂(かなだま)みたいな感じがじゃ?」

タヌキが答える。

「見た目はそんな感じらしい。見たことないからわからんけど…」

犬神が質問する。

「まぁ、そのユーホーは置いといて、幽霊は何故未だに信じられてるんじゃ?」