彼女がいる場所。

今となっては、墓だけしかしらない。


「ほら、持ってきたよ、じゃが」


石に話しかけるなんて、と自分自身が馬鹿らしく思えるが、それでも僕は話しかけていた。


僕は世界を壊した。

情報を奪い、感情を奪い、大切な存在さえも奪った。

この世は、もうどうすることも出来なくなった。


目を閉じて、願ってみた。

彼女が戻ってきますように、と。


その願いは叶わなかった。

どうやら、彼女がいなければ、僕は願いを叶えられないらしい。


立ち去る前に、僕はもう一度彼女に向き直る。

一つ、言っておかなければいけないのだ。




「僕は、花本美咲を忘れない」