え……。


それって。


もしかして、妊娠してるの……?



「幸せに……なってください……」


いつも高いヒールの靴を履いていたお姉ちゃんが、ヒールの無いパンプスを履いていただけで気づいたテルさんは、それだけお姉ちゃんを見ていたということ。


「ええ。幸せよ。とっても」


……嬉しいことなのに。


テルさんの気持ちを考えると、胸が張り裂けそうになる。


「……」


そっと、手が握られた。


行き場のないあたしの想いを汲みとってくれた、凌牙の温かい手。


大翔の言葉を借りれば、"どこで何"が起きるか分からないとして。


テルさんとお姉ちゃんは。


もう、"どこで何"も起きないんだと証明されたようで。


お姉ちゃんの妊娠は嬉しいのに。


……それでもやっぱり、胸が痛んだ。