「先輩ー!!」



僕は目の前に見えた先輩の元へ最高の笑顔を浮かべながら駆け付けた。


「また、君?」



「君?じゃないです。椎名 和っていう名前があります!」




こんな少し迷惑そうにされても嬉しい僕はおかしい。




「ハイハイ、和くん、ね?」


「………。」



先輩は普段はクールなのにたまにこうして微笑んだりする。



「先輩、移動教室なんですか?」


「そう、次、化学の実験なのよ。だから君と話してる場合じゃないの。」


「呼び止めてすみません。実験、頑張ってください。」



少しシュンとする僕。




「千尋、何しての?行くよー?」


「ごめん!今行くー!!」



先輩のお友達の声でもう次の授業まであまり時間のないことに気がつく。




「じゃあね。」



小走りに去っていく先輩はいつもと変わらずかっこよかった。




あっ、僕もそろそろ戻らないと間に合わない。



僕は小走りで先輩とは逆方向に急いだ。



なんとか間に合ってホットしたのも束の間。




「トイレの割には遅くね?また先輩?」


「そんなんじゃないって。」



真司にはなにもかも見透かされていそうで怖い。




ただ単に僕がわかりやすいだけなのかもしれないけど。




「お前もよくやるよな。伊吹先輩、彼氏いるし付き合えないってわかってんのにさ。」



「それはわかってるよ。奪いたいとか思ってないし、ただ仲良くなりたいだけだよ。」




そんなこと、わかってるんだよ?



僕が1番わかってる。