「公園に繋がる抜け道があるんだ」


空は青を通り越して白かった。真っ直ぐな日光が肌を刺す。

内緒ね、と葵は笑って顔の前に人差し指を立てた。

どうしてそんな場所にあたしを連れて行くんだろう?いろいろと聞きたいことはあったが、どれから聞けばいいかわからずにあたしは黙り込んでいた。

「あたし学校の中って好きじゃないの」

葵はうん、と大きく伸びをしながらそう言った。

「桜に囲まれてさ…なんか牢獄みたいで、息苦しい」

「お花見しようって誘ったのに?」

「あれ、そんなこと言ったっけ?」

あっけらかんと嫌みのない笑顔を見せる彼女は、すごくキラキラと輝いて見えた。

そんな葵の隣、いつの間にかつられて笑っている自分がいることに気がつく。

葵が同じように感じていたことが、なんだかとても…嬉しかったのだ。


葵の言う抜け道を通って公園に着くと、そこにはもうすでに一組のシートが広げられていた。


「葵ーっ!!はーやーくー!!」

手をブンブンと振る女の子に、葵も笑顔で答える。どうやら二人ではなく、葵の友達も一緒にということらしい。

シートにはお菓子の山が積まれており、すでにいくつかに手がつけられている。

少し気まずい思いでぺこりと頭を下げると、その女の子もにっこりと笑っておんなじように頭を下げてくれた。

「桃ちゃんでしょ?はじめましてっ!!葵の友達の奈々美です!」

明るさが滲み出ているような笑顔は、あたしを心から歓迎してくれているようだ。

しかしホッと一息ついたのもつかの間…あたしは目を見開いた。

その女の子の後ろ、ちょこんと小さく座って遠慮がちにあたしを見ている真ん丸い頭。

恐る恐るあたしの顔色を伺う、大きな瞳。


…それは、間違いなく美登里だった。


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