マンションを出た工藤は、そのまま車で黒瀬の住む家へ向かった。


到着した後、大家に頼み黒瀬の部屋の鍵を借りる。


そして部屋の中に足を踏み入れた。


その手に拳銃を構えながら。




勝手に中を見て申し訳ないが、状況が状況なだけに躊躇はできない。


気配を消し、音を立てないようにしてさらに奥へと進む。


そしてパチリと電気をつけた。




部屋の中は驚くほど何も無かった。


目につく大きな物はテーブルだけ。


あとは大きなダンボール箱が数個、隅に積まれているのみ。



台所も使われた形跡がほとんどなく、小さな冷蔵庫があるだけだった。


寝室が別にあるようで、その扉を静かに開ける。


するとそこは驚きの光景が広がっていた。


ベッドは普通。


しかし異常だったのは寝室の片隅においてあるテーブルの上のもの。


あったのは複数のデスクトップとこれまた複数のハードウェア。


まるでその一角だけバーチャルな世界になったように錯覚しそうなくらい、ハイテクな機器がずらりと並んでいたのである。




(何でこんなものが...!!)



とてもじゃないが現役の高校生が持っているようなもんじゃない。


一体彼女はここで何をしていたんだろうか。


知れば知るほど訳が分からん。




工藤はきょろきょろと部屋を見渡す。


そして工藤は見つけたのだ。


ベットの下、小さな箱の中に入っていたあるものを。




...





空が暗がり、二十時を過ぎた頃


警視庁のある一室


雪村と佐久間がいるその部屋に、工藤がやってくる。



「…やっと来たか」


「遅いぞ工藤くん」



「…あんたら座ってただけだろ、ったく」



おじさんたちの理不尽な言い分に工藤は大きくため息を付きながら二人の向かい側にある椅子に座った。




「…事態が動き出したんだな」


「ええ。教えてください、彼女の事を。もう一刻の猶予もないのかもしれない」


「ああ…」




事の始まりは、十三年前。


黒瀬凪咲の両親の事故死から始まった。