-ギィィ バタァンッ‼-



さくらは不機嫌に田村家のドアを閉めて、アルバイト先のさんちファームへと向かう、

なぜ平日の昼間からこんなに不機嫌なのか、それには理由があった。



前回さくらの世界の北総と、勇次の世界の北総は、全く違う高校であることが判明し、このパラレル世界で見つけた初めて相違点だったのだが…

勇次が持ってきた学校の資料や歴史を調べても、北桜居校は華顔稲荷とは縁もゆかりもなく、

校舎や学校の構造が違うだけで、これといった手がかりは得られなかったのだ。

さくらは期待していた分、裏切られた衝撃は強く、行き場のない苛立ちは収まることなく、現在の仏頂面に至るわけである。



(さくら)「ぬぅぅ… なんでこんな最悪な気分でバイトになんか行かなきゃいけないのよ…」



それは仕事だからしょうがないことなのだが…



(さくら)「あのバカも変に人の気ばっか使いやがって…」



あのバカとは勇次のことだ。

過去を遡り北桜居校の資料を調べた日のこと、

一通りの資料を調べ終え、さくらは手がかりがないと判明した瞬間、力が抜けたかのように机へ額をつけ、そのままこめかみに眉を寄せて言った。



(さくら)「クソッ… やっと手がかりを掴んだと思ったのに…」



その様子を隣で見ていた勇次はかける言葉が見つからず、ただ心配にその場で見ているだけだった。

すると、さくらは机に額をつけたまま、勇次に顔を向けることなく言うのだ。



(さくら)「……アンタが悪いのよ… アンタが変に期待させるから…」



(勇次)「……すまん…」



(さくら)「すまんじゃないわよ、誰が悪いか本当にわかってる…!?」



(勇次)「……俺が悪かった…」