「…………ほんと、バカ!」

「!?」


暴言ではあったけど、その口調で安堂くんがいつもの安堂くんに戻ったと分かった。

安堂くんは許してくれたんだ。

あたしはホッとして、笑みが零れた。


「こんな…びしょびしょに…!」


安堂くんは、今更、濡れたことを怒っている。


「あは、ホント、ひどいね。二人とも超びしょびしょ」

「…これじゃ電車もバスにも乗れないね。店にも入れない」

「――あ、そっか。どうしよ」


スカートを絞ると水が出てきた。

「へへ」と泣きっ面で笑ってみる。

安堂くんはそんなあたしを、いつものように呆れた瞳で見据えた。

そして――。

安堂くんは顔にかかった髪を払い、とある場所を指差していた。


「だから、あんなとこでしか雨宿り、できないよ」

「……………!!!」


その指差された場所を見て、あたしは口を菱形に開けた。


(あそこは…!!!)


一難去ってまた一難。

男女関係は、想像以上に難しい。