「!」


安堂くんから、渾身のボディーブローを喰らった。


「欲しいよ! 欲しいに決まってる!」

「涙目……。そんなに?」

「そんなに!」


恥ずかしさと堪らなさにぐちゃぐちゃになって、気付けば後戻りできなくなっていた。


「ど、どうやったら、彼氏ができるんですかねぇ……!?」


ああ、赤っ恥。

仮にも、キスしてきた安堂くんに聞くなんて、どんな罰ゲームだ。


「……今のままなら、一生無理じゃない?」

「……………………、」


しかしそこで、こういうことを言ってくれるのが彼だ。

だったらなぜ、キスした。

何であたしにキスをした…!!!

耐えろ知枝里。

堪えるんだ知枝里。

安堂くんは傷心中だ。


「…な、なるほど?男の子の目線から見て、ん、どうしてあたしには、ん、彼氏が出来ないと?」


冷静を装って聞いてみた。

訊ねたあたしに、無表情な安堂くんの瞳が向いた。


「…言っていいの?」


そう聞かれると怖くなる。


「も、もちろん、言っていいとも?」

「…本当に?」

「……本当に」

「分かった」

「………っ」


安堂くんが微かに頷いた。

本当はちっともよくない。

心臓はバクバクいってる。

彼氏いない歴=実年齢のあたしにとって、安堂くんが口にする、恋愛の先輩的視点からのご指摘は、胸をえぐるものじゃないのか?

この小さな胸を痛め付けるだけの言葉じゃないのか!?

心臓を押さえて、安堂くんの言葉を待った。


「ひとを……誰かを好きになったこと…、小林はないでしょ?」