勢いよく振り返った。

数週間前までは、面と向かって立つことすら出来ない人だった。

そんな彼と向き合い、今、なぜか、彼があたしへと背を曲げている。


「え、ちょ…!?」


長い体が背を折って、鉄の扉の前に立つ彼。

それが何の序章か、分かってしまう自分が怖い。


「えっ、ちょ、なに!? ―――んっ…!?」


そうして、触れた唇。


(なぜに、キス!?)


ポカンとするあたしに、安堂くんは不敵に笑った。


「じゃ、明日は唐揚げね」


そう、一言言い残して、彼は校舎の中へと消えていった。