「な、な、なんてことしてくれてたのよ…!!!」


今までのどの瞬間よりも真っ赤になって叫んでいた。


「…彼氏が出来るおまじないだよ」

「こんなんで出来るかぁ!!! 逆に、誰かに見られたら、彼氏いるって思われちゃうじゃん~~~!!!」


半ベソで、喉元に赤く色付くその痕を指先で擦った。


「…ああ!!」


小さかった赤色が、ますます大きく色付いた。


「……明日は唐揚げ食べたい。揚げ物食べたい」

「んなこと言ってる場合じゃないっ!!」


どうにかして、キスマークが消えないかと、鏡片手に悪戦苦闘しているあたしに、綺麗な顔した悪魔が言う。


「屋上(ここ)ももう少しで限界かなぁ…。既に寒いし」

「じゃあそれで、あたしも解放されるのかしら!?」


第一ボタンまでしっかり締めれば、どうにか見えない。

シャツのボタンは1つ開けてる方が可愛いのに…。


(また、彼氏が遠退いた…)


呆然と涙を流すあたしに、隣の安堂くんは言う。


「…なんで。俺の傷心は、まだ癒されてないけど?」

「……っ」


たまに強気になりやがる。

大人びた顔といい、こういう顔といい…!

それに背も高い。(細いけど)

安堂くんが座っていて、あたしが膝をついて立っていて、それがちょうどのサイズだったりする。


「…ふんっ!」


色んな意味で、勢いよく鼻を鳴らして、屋上のドアを開けようとした。


「―――たぁッ!!」


しかしドアが開かなくて、開く予定で歩いたあたしは、しこたま鉄の扉に頭をぶつける羽目になった。


「…痛…!!」

「痛いってのはこういうことを言うんだよ」


どうやら、扉の上の方を、安堂くんが押さえていたらしい。


「ちょっと!何するのよ!!」