「バーカ。ちゃんと分かってんじゃねぇか」


「中田……」


顔を上げれば、わざとらしく溜め息をついた中田があたしを頭をコツンと優しく小突いた。


かと思えば、その手でポンポンと軽く頭を叩かれる。



「アイツがお前を拒絶したら俺がぶっ飛ばしてやるよ」


「……」


「何だよ?」


「いや、それ、逆にやられるんじゃない?」


「オイ」


「いたっ。冗談だってば!」


「当たり前だ」


グリグリと頭を押さえつける中田に速攻白旗を挙げたあたしは、中田の目をジッと見つめ返した。



「何だよ」


「……ありがとう」


「………」


「あたしを救ってくれてありがとう」



救うって言葉は少し違うかもしれないけど、中田が連れ去ってくれなかったらあたしは今頃どうなっていたか分からない。


さっきみたいに自分の気持ちを見失って、十夜に拒絶する事ばかりを考えて十夜の前から姿を消していたかもしれない。



「あたし、十夜の事諦めないって決めたの。だから怪我の事を謝って、もう一回好きだって言おうと思う」



知らなかったとは言え、十夜に怪我をさせてしまったのは紛れもない事実。


心から謝罪して、その後自分の気持ちをもう一度伝えようと思う。


その為には十夜の元へ──鳳皇へ戻らなければいけない。




「お前はこれからどうしたい?」



「……あたし、は……」