「先生、もっと強い薬は無いですか?これじゃあ、ずっと苦しいんです」


毎晩、あたしはあの時の、渚くんがあの男に傷つけられる夢を見ている。


大切な人がどんどん傷つけられていって、最後はあたしを傷付けて笑うんだ、あの男は。


「ほのかちゃん、薬だけではダメなんだ…」


先生は、あたしを諭すように話す。


「心の傷は、薬よりももっと……それを癒すような誰かの優しさが必要なんだよ」


「………そんなの……」


もう、無くなってしまった。

誰よりも優しいあの人は、もういない。

あたしが、あたしが手放した……。


「虐待から起こるPTSDは、自分を卑下する人が多い。ほのかちゃんには、誰よりも、ほのかちゃん自身を大切だと言ってくれる誰かが必要なんだ」


「傍にいたら、あの人を傷つける……」


「そうか、ほのかちゃんには、誰よりもほのかちゃんを大切にしてくれる誰かに、出会えたんだね」


「あ………」


それは、きっと渚くんだった。


自分が傷ついても良いからって、あたしの傍にいてくれようとした…。


言葉ではいくらでも言えるけど、渚くんは実際に体で証明してた。