「うぅっ…ふっ…うっ…ああぁっ」


そして、両手で顔を覆い、我慢していた気持ちを吐き出すように、子供のように泣きわめいた。


この前にある壁は、薄くて、開けようと思えば、すぐに開けられたはずなのに……。


あたしと渚くんとの間にある、とてつもなく高く、厚い…越えられない壁のように思えた。


好きだった、大好きだった。

渚くんの傍に居る時が、一番この世界のどこよりも安心した。

楽しい、嬉しい……そんな感情をまた持つ事が出来たのは、渚くんがいたからだよ。


「でも……知りたくなかったなぁ…っ」


あたしは、これで大切な人を失った痛みをずっと抱えていく。

それは、あたしだけでなく、渚くんも。

「あたし達……出会わなければよかったのかな…?」


そうすれば、あたしは心を持たずに済んだのかもしれない。

苦しい、悲しい……身を裂かれるような、こんな痛みを知らずにいれたのかも。


「さよならっ……」


心から、渚くんが好きだった。

ううん、今も。

だから、この先もずっと、あたしは苦しみ続けるんだろう。

また、この心に頑丈な檻が出来るまで、ずっと…。