ーーー終業式が終わり、春休みとなった。
今日は桜井家の人たちとおばあちゃんの家へ行く日。
「さゆりちゃん、全部荷物のったー?」
響也さんが車に荷物を詰め込みながら聞く。
私は『大丈夫です』と言ってドアに鍵をしっかりかけると、車に乗り込んだ。
発車する車に乗ってる五人。
一番前に響也さん、真ん中に桜井くんと美少年。最後の列に私と可愛い男の子が座る。
名前の知らない人が二人……。
やっぱり二人ともお顔が整っていらっしゃる……。
隣の可愛い男の子が私のパーカーの裾を引っ張った。
「おねぇちゃんとパーカーお揃いだー」
か、かわいい…。
ウサギ耳のついたピンクのパーカーの男の子。
お目目がくりくりで、金髪ぎみのくるくるな髪がキュートすぎる!
「お、お揃いだね……」
「おねぇちゃん、さゆりって言うんでしょ?可愛い名前だねー」
「…ありがとー」
この子将来、タラシになりそう……。
「ぼく、昇。昇っていうのー」
「昇くん……?」
「うん!」
ああ、きらきらスマイルにやられそう…。
昇くんの周りだけ花が飛んでるようにみえるよ……。
子供は嫌いじゃないけど、私、一度も好かれたためしがなかった。
始めてだよ。こんなの。
「おねぇちゃん、【高嶺の花】なんでしょ?」
「え、」
昇くんのよくわからない質問に首をかしげる。
「わ、昇。その話しダメだってー」
前の座席から振り向いた桜井くんはアワアワと慌てた。
「ねぇ…【高嶺の花】って……」
「……はぁ……」
ため息……?
「皆がそういってんの!手が届かない人だなって」
あーあれか
私、学年首席だからか。
「へぇーさゆりちゃん、【高嶺の花】なんて呼ばれてるんだ…」
響也さんが笑う。
私をチラッと見ると、『なるほどね』と呟いた。
はて?
「高嶺の花とは、ただ遠くから眺めているだけで、自分のものにはできないことのたとえーーー高価なものや美しい人に対して使われる言葉だね」
前の美少年がとても詳しい解説を加える。