いや、待て。『竹の方が梅よりも上なんだから、俺を敬えよな』『梅は竹と松のためにパシられろ』なんて憎たらしい口をきく竹ちゃんのことだ。絶対にこれは嘘だ。嘘に決まってる。だって、『そういや今日は四月一日だもんな』って前振りでしょ?

 私も同じようにまじめな顔を作って言う。

「じゃあ、私も好きって答えるかな」

 竹ちゃんが缶コーヒーをソファの横に置いた。そうしておもむろに私を見た。

「じゃあさ」

 ゴクリとつばを飲み込んで、びっくりするほどまっすぐな眼差しだ。

「俺がおまえに……キスしたいって言ったらどうする?」
「えっ」

 心臓がドキンと跳ねた。

 いや、待て。待て待て。今日はエイプリルフール。竹ちゃんの盛大な嘘なんだろう。

「いいよって答えるかな」

 私が言ったとき、竹ちゃんが私の方に身を乗り出したかと思うと、私を囲うように顔の両側に両手をついた。竹ちゃんに両手で壁ドンされて、彼がまつげを伏せて顔を傾けてきて、鼓動がどんどん大きくなる。

 なんで? なによ! いつ「嘘だよ、バァカ」って言うの!? このままじゃホントにキスしちゃう……!