この心臓の暴れ具合はもう自分では処理できそうにない。

お願い、せめて勤務時間は許して欲しい。

そんな願いを込めて私は半泣きになりながら夏目くんを見上げた。

「夏目くん…もう少し勘弁して?」

局地的な高濃度フェロモンは私にとって大人過ぎるんだよ。

しかし夏目くんはまたも怪しげな表情を見せるとほんの少し視線を宙に逃がして考えた。

「うーん…。」

その声に淡い期待が高まっていくけど

「まだまだかな。」

やっぱりそれは儚すぎたようだ。

「う~~~~~~っ。」

言葉にならないもどかしさで訴えていると夏目くんは楽しそうに笑った顔を見せた。

「じゃあそろそろ落ちて。」

そう言って僅かに身を屈めるとこれ以上ない潜めた声で夏目くんは私に囁いたのだ。

「今日の夜、空いていますか?」

首を横に振れない私は、完全に落ちてしまった事を悟ったのでした。