受付で遊大の部屋の番号を聞き、足早に病室へと向かう。
遊大の病室は九階にあるらしい。
病棟用エレベーターに飛び乗り、荒々しい手付きでボタンを押した。
幸いな事にエレベータの中には誰もいない。
痛む頭を髪の毛越しに掴み、エレベータの壁にそっと背中を預けて遊大の名前を呼ぶ。
『一体誰が……』
遊大をこんな目に合わせたの?
狭い空間に溶ける自分のか細い声。
それが完全に消えた時、その代わりだとでも言う様に軽快な音がその場に響いた。
開かれた扉に直ぐ様反応する身体。
エレベータから降り、すぐ目の前にあった九階の案内看板に駆け寄る。
『903号室……』
あった。
遊大の病室を見付けたあたしは直ぐ様行動に移した。
幾つかの角を曲がり、病室を目指す。
『──遊大はいつ目を覚ますって?』
『……っ』
不意に聞こえたその声にピタッと足が止まった。
聞き覚えのあるその声は紛れもなく慧くんのもので。
『分からない。けど、医者は直ぐに目を覚ますだろうって』
続いて聞こえた貴兄の声に思わず息を呑んだ。
壁に凭れ、二人の会話に耳を澄ませる。
……居るのは貴兄と慧くんだけ?