「ーーはぁ………」
買い物を終え、前方でスキップしている恵美さんの手前にため息をつく。
持っている荷物が結構重い。
隣にいる響也さんもげっそりしている。
「さゆりちゃん、ごめんね。母さんテンション上がると他のこと見えなくて。」
うん。なんとなく分かる気がします。
「母さん多分今日は楽しすぎたんだ。」
今日は……?
「二人とも!次はどこにいきたい?」
振り替える恵美さん。
それに響也さんは苦笑いする。
「僕はこの荷物、車に置いてくるよ」
『頂戴』と言って私の持つ荷物を受け取る。
「ああ、今日、神田いないものね。ごめん。宜しくするわ」
「二人はそこら辺のカフェででも話して待ってて。」
「はーい」
いいお返事の恵美さん。
たまに疑いたくなる。どっちが親でどっちが子供なのかを。
「さ!カフェで何飲む?」
入店してオーダーを決める。
「……じゃあココアで…」
「OK」
店員さんに注文した後、目の前でにっこり微笑む恵美さんがいた。
「な……なんですか……?」
「えへ。娘とデートなんて憧れで、もう叶わないと思ってたのに。嬉しくて」
「……っ…」
恵美さんはストレートすぎる。
そういうところが苦手なんだ。
「あれー?もしかして照れてますー?可愛いー」
「ててて、照れてなんか……」
照れてなんてないし。
ただ、私も母親ともう一緒にどっか行くことはないと思ってたから…。
おんなじ気持ちだったから……
少し。ほんの少し。
嬉しいって思っただけなんだ……ーーー。