『……今、何て言った?』
鼓膜に突き刺さった叫声に、持っていたボールがするり、両手から落下した。
『遊大が、怪我……?』
聞き間違いだと思った。
遊大が怪我しただなんて、そんなの……!
『なんで!?なんで遊大が……!!』
近寄ってきた男の子に詰め寄り、乱暴に両腕を掴んで揺する。
『それが……』
悔しそうに破顔させた男の子は、たった今知らされたばかりの事実を声を震わせながら説明し始めた。
『そんな……』
知らされた事実に拳が震え、目前が闇色に染まっていく。
湧き上がるのは何とも言えないドロドロとした感情。
『総長達にはさっき連絡した。今から病院行くって』
『……どこ』
『え?』
『病院』
『あ、』
『どこっ!?』
『……っ、福永総合病院……ってちょ、リン!?』
言い終わる前に倉庫を飛び出したあたしは、背中に刺さる制止の声を全て無視して無我夢中で走った。
目指すは福永総合病院。
その病院は地元の人なら誰でも知っている有名な病院で、獅鷹の倉庫からそんなに遠くない所に所在していた。
『……はぁ…っ、』
目前にそびえ立つ建物を見上げる。
去年新設されたばかりの病院は一階から三階までガラス張りになっていて、外からでも病院内が見えるような造りになっていた。
ゆっくりとした足取りで病院内を歩く人達を見て、フゥと一つ深呼吸をする。
……よし。
息を整え、そっと一歩足を踏み出した。