「私、さゆりちゃんに『ママ』って呼んでもらいたいわ」


「……………」



二人の勝手な言い分に少しの怒りが生まれてくる。




再婚なら勝手にすればいい。


だけど……私の心の中にズカズカと踏み込まないで。




ーーーだって、どうせ私から離れて行くんでしょ?



『あんたなんかいらない』



あの日みたいに大切なものを失うのは



もう、こりごりだ。




ーーーー




「ごめんなさい…私、調子が悪いので…失礼します……」


「……さゆり…?」



心配そうに見る三人を背に、階段を昇る。



部屋に入ってフゥーの息をついた。



一人になるとやっと息が出来る。



そんな気さえあって、私はやっぱり一人が好きだと思うのだったーーー。
 














「さゆりちゃん…大丈夫かしら…」


「すいません。さゆりは本当に一匹狼でして…人といるのを嫌うんですよ…」




匠が悲しそうに笑うのを見て、何かあるなと感じる響也。

そして、その場を和ませるべく優しく微笑む。



「今日は突然押し掛けてしまってすいません。母がさゆりちゃんとどうしても会いたいと言うもので」


「えー、だって会いたかったんですものー」



子供染みた言葉に二人が笑う。



それに対して大人な子供、恵美の息子の響也は今は帰るべきだと判断した。



「僕達はここで失礼させていただきます。」


「え!?早いわよー」


「お父さんは、一度ちゃんとさゆりちゃんと話すべきだと思います」



それを聞いて眉を下げる匠。



「……響也くんは鋭いな……ありがとう。話してみるよ…」



その微笑みはとても悲しげだったーーー。