『じゃあ、今度は俺が甘えてもいいってこと?』

「!…はい」


杉原さんの問いかけに、私は反射的に返事をしてしまう。

これで、彼に何かを返せると思うと嬉しくて。

それだけで、心の奥にひっそりと存在していた彼に対する罪悪感を拭えると思って。


うーん、とひとしきり何かを考える素振りを見せた後、杉原さんは、あっと小さく声をあげた。


『さっきのストラップ。』

「へ…っ?」


ストラップ?

私を見つめる杉原さんは、何かを期待する子どものような顔つきをしている。


『みのりさんのスマホに付いてるストラップ。…――あれ、欲しい。』

「……!」


杉原さんからの初めてのおねだりは、あまりにも私の予想を超えたもので、思わずビックリしてしまう。

本当に、あんなものでいいのだろうか?

確かに、あれは私が作ったものだけど、試しに作ってみようという軽い心意気で作ったものにしては上出来だったからスマホに付けていた物であって、決して杉原さんに欲しいと言ってもらえるような代物じゃない。


「いや、あの…もっと違う、少し高いものでもいいんですよ…?」

『そんなのはいらない。…みのりさんが俺のために作ったものが欲しいんだよ。ウサギじゃなくてもいいから、俺に似合いそうなものを作ってくれる?』


今にも楽しみだとでも言いたげな笑顔で、期待を込めたトーンで言われてしまったら頷かないわけにもいかない。

結局、杉原さんのためにストラップを作ることになった私は、完成したら杉原さんに連絡するという約束を取り付けられて、その日は杉原さんと別れたのだった。