「ご家族の方ですね」

ドアが開き、中から医者が出てきた。
ドアはすぐに閉まったけれど、ちらっと見えた結城はたくさんの管に繋がれていた。

「今の状態を説明します。結城廉太郎くんに、数カ所の骨折と頭部外傷を認めました。大量の出血があり輸血が必要な状況です。同意書にサインをいただけますか?」

「わ、わかりました」

おばさんは震える手で書類にサインを書いている。なかなかスムーズには書けない。

「廉太郎は…無事、ですよね…?」

美和子が先生に尋ねた。先生は言葉を探るようにして答えていく。

「内臓に目立った傷はなく、外傷性の出血ですので、止血と輸血により生命の危機は脱するでしょう。しかし頭部外傷というのが気になります。現在は画像上脳に異常はありませんでしたが、強く頭を打ったようなので……意識が戻るかどうか、それは時間が経たなければわかりません」

いつも気丈な美和子が泣き崩れた。
おばさんはサインした書類を先生に渡し、深々と頭を下げる。

先生も一礼し、処置室へと戻っていった。