ケータイ小説 野いちご

フレキシブル・ソウル


「あっちゃんは、ひどい」

「情けないこと言うな」

「馬鹿にすんなま!」



突然の大声に、ぎくっとした。

林太郎が、上半身を肘で支えて、きつい視線を送ってくる。



「僕は…僕は、あっちゃん好きやけど、それは好きにしたいって意味やない」



震える唇で、涙ぐみながらも毅然と私と対峙する。

全身が、私を責めていた。



「あっちゃんが、笑ってると嬉しいってことや、ほんで一緒にいたいってことやで」

「林太郎…」

「ほんとに好きにしたいんやったら、僕なんていくらでもチャンス、あるわ」



威勢のいい台詞とは裏腹に、子供みたいに手の甲で目をこすり、鼻をすする。



「馬鹿にせんといて」



吐き出された言葉が、胸をえぐった。


ごめん。

ごめん、林太郎。



「降りて」

「林太郎、あの」

「いいから、降りてや」



言うなり林太郎は、私の両脇に手を入れて、ひょいと自分の上からどけた。

あまりに軽々とだったので、私は抵抗するタイミングもなく、おとなしく動かされるままになる。


林太郎は、短く鼻をすすりながら、立ちあがった。

そのまま玄関のほうへ向かうのを、なすすべもなく見ていると、戸口でふと、振り返る。


行き場のない熱い息を、苛立たしげに吐いて。

畳に座りこんだ私を、濡れた目で、上からじっと見つめていた林太郎は、やがて、ぶつけるように言った。



「好きやよ、あっちゃん」



喧嘩腰ともとれる、押し殺した声。

自分でも、状況にそぐわない発言だと感じたのか、林太郎はめったに見せないような仏頂面で。

溜まった涙を乱暴に拭うと、不機嫌な視線をあちこちさせて、一瞬、私を見る。

すぐに、傷ついたようにまた、うつむいて。



「言っつんたわ」



不本意そうにしかめた顔で、低く吐き捨て、出ていった。




< 105/ 154 >