シュウの視線の先を私も見つめる。


水面に揺れる夕日。
もう半分以上水平線に沈んで、今日の役目を終えようとしている。

夕日の紅から、シュウが好きな群青色の空が姿を現して、そして夜が来る。


時間は止まらない。止まってはくれない。

今が過去になり、未来が今になる。


私達に与えられた人生の砂時計。
それは人それぞれ大きさも流れる速さも違うけど、落ちてしまった砂はもう二度と戻らないんだから。

我慢せず、ありのままの自分らしく生きていきたいと思った。


私はずっと自分で自分の砂時計を割ってしまおうと思っていたけど、この砂が落ちきるまで頑張りたいと思えたのはシュウと出会えたからだ。



「あいつらみたいに自由になりたい。逃げ出したあの頃はそう思ってたけど、今は少し違う」


「どんな風に?」



シュウは沈み行く夕日から私に目を移すと、柔らかな笑みを浮かべた。

ドキン、と胸が鳴る。



「今はサチと二人で自由に、自分達らしく生きたい」



涙が頬を伝う。

「泣き虫」と言いながら、それをシュウが親指で優しく拭ってくれた。



「サチも同じ気持ちだと嬉しいんだけど」



言葉が出ない。
シュウも私と同じことを思ってくれてたことが嬉しくて、言葉が詰まる。


私は返事の代わりにコクコクと何回も頷いた。



「はは。サチ、可愛い」



そう言って、シュウは右腕で私を抱き寄せる。そして、反対の手で宥めるように頭をポンポンと撫でながら、



「サチに出会えて本当に良かった」



そう涙交じりの声で呟いた。


シュウの胸に顔を埋める。

心臓の鼓動が速い。力強く胸を打ちつけて、シュウがここにいる。
当たり前のことだけど、そう実感した。