この時のあたしは浮かれていたのかもしれない。


この時恭が、何を考えていたのかも、


何で少し寂しそうな表情をしたのかも。


深く考えようとなんてしなかったんだ。


ただただこの恋に、恭を愛しいという気持ちに、溺れていたかった……。


この時既に、あたしの知らない所で、沢山の事が動き始めていることに気付かないフリをして───






ブォン!という大きなエンジン音を響かせ、バイクが走り出す。



それに続いて、沢山のバイクが飛び出してくる。


聖なる夜だとは思えないような真っ暗な闇に向かって走り出すバイクの上で、


あたしは必死で恭の背中にしがみついて、この幸せに浸っていた。