俺から取り上げた本を素直に返そうと、俺の本を差し出してきた哲也だが、次の瞬間、横から入ってきた第3者の手によって、またもや俺の本はどこかへ攫われていった。


「あっ、おい…!」

『つーかさぁ~、』


次に俺の本を奪い取ったのは、浩介。

今までの俺と哲也のやり取りを見ていたらしい浩介は、数秒、俺の本の表紙を見つめると口を開いた。


『…最近、よっちゃんってこの本ばっか読んでねーか?』

「っ…!」

『『は?』』


浩介の言葉に、言葉を詰まらせてしまう俺と、固まる哲也と徹。

次の瞬間、哲也と徹が浩介の元へ飛んでいき、3人で本と俺を交互に見つめてくるものだから、俺は目のやり場に困って顔を逸らしてしまう。


『確かに、コレ1週間前も読んでた。』

『は?マジ?500ページはある分厚い本を2日で読み終える、あのよっちゃんが?』

『え、そのよっちゃんが1週間以上も読み終えられねーほど、難しいのか、コレ?』

『んなわけないでしょ、ただの推理小説なのに。』

『『『――怪しい…』』』


3人の痛いまなざしが、一斉に俺に集まった瞬間、楽屋のドアが開き、リーダーである俊がトイレから戻ってきた。

そのせいで、楽屋にいた4人の視線は、入ってきたリーダーに向く。


『……何?』


いつもは楽屋の出入りなんて気にしないメンバーから、楽屋に戻ってきただけで凝視されることに戸惑いを隠せないらしいリーダーの顔はとんでもなく引き攣っていた。