もう少しで壱さんに抱きつけるかと思ったのに直前で馬鹿煌に邪魔をされ。


お陰で行き場を無くしてしまった両手は空しく宙に浮いたままになってしまった。



っていうか、押さえつけるとこ間違ってない!?顔面って!

指、超食い込んでるんですけど!!



「その手、離してくれません?」


「……出たな、シスコン2号」


「シスコン2号?」



……あ。今、優音のこめかみがピキッて言った気がする。っていうか絶対言った。


心なしか声も低くなってる様な……。



「オイオイ。優音が2号って事はまさか1号ってのは俺の事じゃねぇよな?」


「そのまさかだよ。シスコン1号サン」


さらりと肯定した煌は押さえていた手を少しだけ上へ移動させると、何の合図もなくトンッと押した。


ちょ……!


まさか押されるとは思っていなかったあたしはバランスを崩し、フラッと後ろへ倒れていく。


「煌、可愛い妹に何すんだよ」


けど、運が良い事に少し傾いた所で貴兄に受け止められ、何とか後頭部強打だけは免れた。


良かった、と安堵の溜め息を吐き出した後、キッと煌を睨み付ける。


「その発言がシスコンだっつーの」


悪びれる様子もなく、呆れた表情でそう言って退けた煌はどうやら真後ろに貴兄がいるのを知っていたらしい。


それでもいきなり押すのはどうかと思う。


後頭部強打とか絶対痛いし。下手したら病院行きも有り得るんだから。