意味が分からない。

私をココから救い出す?この地獄から?
なんで?何のために?



「もう我慢しなくていい。俺はサチの味方だから」


「バカなこと言わないで」


「俺は本気だ」



本気だ、と私の胸を射抜くぐらい力強い瞳を向けてくる金髪男。

その目は冗談を言ってるようには見えなくて、私は一瞬ハッと息をついた。



「っ、もうあんたに会うこともないから」



そう言って、私は走って逃げた。


「おい!サチ!」と、後ろから声が聞こえる。だけど、私は足を止めることなく走り続けた。




心臓が苦しくて、胸をギュッと掴む。

走ってるからじゃない。
あいつの言葉に、私…動揺してるんだ。



“俺がサチをそこから救い出してやる”

“幸せを俺がサチにやるよ”

“俺はサチの味方だから”



あんな言葉、今まで一度だって言われたことない。


嘘だとしても。
空気に流されてその場限りで言った言葉でも。


何でかな……凄く、心が震えた。


震えて震えて、どうしたらいいかわからなくて。いつの間にか走って逃げてた。



金髪男の言った事で、こんな風に動揺するなんて…本当に馬鹿げてる。


明日にはさっき言ったこと絶対忘れてるようなただの偽善者なのに。


私、あいつの言葉に一瞬でも期待したんだ……



カンカンカンと、踏切の警報機がけたたましい音を鳴らしながら棒が降りてくる。


今、線路内に入れば確実にこの人生に終わりを迎えられる。


なのに、足が地面に張り付いたように動かなかった。