これが工場跡で起きた出来事。


優音が言っていた“遊大に二回助けられた”の意味だった。



「遊大と一緒に戻って来るから」


「……うん」


本当は行かないでと言いたい。


けど、優音の気持ちを思うとそんな事言えなかった。


だって、遊大が拉致されて一番悔しい思いをしているのは他の誰でもない優音だから。


「……気をつけてね」

「あぁ」


ぐるりと室内を見回し、「皆も」と付け加える。


すると、皆は「任せとけ!」と余裕綽々の表情で笑い掛けてくれた。



これから始まる抗争に皆のヤル気は最高潮に達していて。


ギラギラとした猛獣の様な瞳が来るべき時を今か今かと待ち構えていた。


その眼光は目が合うだけで仕留められてしまいそうな程鋭く、思わず身震いしてしまう程怖い。


その瞳を見て、ある光景が脳裏に浮かんだ。


それは、喧嘩をしている姿みんなの姿。


それが脳裏に浮かぶ度、早く終わって欲しいと切に願った。


怪我をせずに無事に帰って来て欲しい。


みんな揃って帰って来て欲しい。


一緒に闘えないあたしには願う事しか出来ないから。


此処で願っている事しか出来ないから。


だから。



「怪我、絶対しないでね」



ずっとずっと願ってる。


帰って来るまでずっと──…