別にだからどうとかいうわけもないけれど可愛い弟を横から掻っ攫われた姉のような気持ち。

賢が希ちゃんと付き合うことになったときはこんな気持ちにならなかったのに。それだけ、修吾には実の弟よりも愛着があったってことなのかな。


「・・・いつになったら気がつくのかと待っていたんですが、この様子だといつまでも気がつきそうにありませんね」


私の前に影が出来た。ゆっくりと顔を上げると、誰?短めのダークブラウンの髪の毛に黒縁眼鏡。

ムスッとした顔をしていて全く誰だか分からない。


「あの、どちら様ですか?」


私の問いかけに呆れて大きなため息をつく目の前の男性。どこがで会ったことがあった?会社?は違う。

行きつけの居酒屋?
この感じだと書店の人とか??


「も、もしかして・・・人違」

「修吾です。高梨修吾ですよ」


修吾?!いやいやいや、さすがに別人でしょ。

修吾め、いくら会わない時期が長かったとはいえ、代理を頼むなんて。


「すみません、修吾が代理を頼んだんですよね?あの、修吾は?」


また、大きなため息。それと共に財布から一枚のカードを手に取り、私に差し出した。


「正真正銘、俺が高梨修吾です。ご理解いただけましたか?」


彼が差し出したのは写真付きの運転免許証。この写真の横には高梨修吾と記載されていた。