「なーにがタキシード仮面様だ」


ケッと馬鹿にする様にそう言い放ったのは此処にいなかった筈の煌。


どうやら一階から戻ってきたらしい。


という事は。


「凛音ちゃんトランプしてるの?」


壱さんと十夜も当然一緒居る訳で。


「陽、早く掻き集めて!」


直ぐ様トランプを集める様指示した。


が、時既に遅し。


「凛音」

「……はい」


分かっています。今すぐ片付けます。片付けさせて頂きます。


背後から聞こえてきたのはお久し振り、大魔王十夜様のお声。


それはそれは背筋が凍る程恐ろしく。


その声から察するに、十夜は未だに“あの時”の事を悔やんでいるらしい。


そんなに悔やまなくても結局尻文字しなかったんだし、別に気にしなくても良いと思う。


と思ったけれど、流石にそれを口に出す勇気はない。


「凛音、お前はタキシード仮面っていう単語を口に出すな」


「はぁ?なんで?」


「何ででもだ」


意味分かんないし!何でタキシード仮面様って言ったら駄目なの?


「じゃあ、まもちゃ──」


「それも駄目」


「む」


ホント意味分かんない。


「取り敢えず男はやめとけ」と呆れ口調でそう言った煌は冷蔵庫に向かい、中からコーラを取り出して豪快に呑み始めた。


納得いかなかったけど、これ以上突っ込むと面倒臭い事になりそうだったからこの辺で止めておく事にした。


代わりといったら何だけど、今の状況を聞いてみる。